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海外トレッキングに必要な体力について

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私がトレッキングに出発するにあたって最も気になったのが、自分の体力で歩き通せるものなのかどうかがわからないという事でした。実際にトレッキングを経験した今となっては、あの程度の体力で通用するのだということがわかりますが、当時の自分としては一番欲しかった情報でした。個人によってどの程度の体力が必要かというのは違ってきますが、登山初心者である私自身の経験をお伝えすることで何らかの参考になればと思います。

それまでの登山経験

私は関東在住ですが、全くと行っていいほど山には親しんできませんでした。トレッキングを意識しだしてから近場の丹沢山地に通うようになり、夏場には高さを求めて富士山にも登りました。が、日本アルプスなどの本格的な山には一度も登ったことがありません。

日常的なトレーニング

出発半年ほど前から丹沢山地に月2回のペースで通うようにしました。大倉尾根(通称バカ尾根)という標高差1200mを一気に登る尾根があり、ここを練習台として繰り返し登りました。標準コースタイムが3時間半ですが、私の場合出発直前でやっと3時間を少し切る程度で、スピーディに登り切るという事は今も出来ていません。大倉から塔ノ岳を通過して丹沢山までの片道10kmを往復する(帰路は鍋割山を経由することも)というのがトレーニングコースでした。このコースをトレイルランニングしている人も大勢いて、この人達ならヒマラヤでトレッキングだけでなく登山ができるのではないかと、なかば呆れながら眺めていました。

日常的にはジョギングを週に数回のペースで行いましたが、登山は登山そのものでしか鍛えられないというのが実感です。低山でもいいので頻繁に登ったほうが効果があるように思えます。

出発直前には高度順化を狙って富士山に2回登りました。1回はできるだけ高地に身を置くために宿泊し、もう1回は長時間歩行の訓練として日帰りの日程にしてみました。須走口から富士山頂上まで6時間前後かかっているので全く平均的な登山力ということになります。

体質的な問題

別のページにも書きましたが私は呼吸器に持病があります。高地トレッキングにあたりその点が不安で国際山岳医に相談しました。先生曰く「標高があがったからと言ってそれが即座に呼吸器に影響を及ぼすものではない」という事でした。100%保証できるものではないが、平地にいるのと同じ健康状態を保っていられるのであれば、持病があっても高地トレッキングを行うことは可能とのアドバイスをいただきました。日頃から身体を動かすことと体調に留意することも日常的なトレーニングの一環として意識していました。

参考にした書籍など(一部)

登山の運動生理学百科(山本正嘉)

これほど具体的、科学的に登山を考察した本もなかなかないと思います。著者自身が8000m峰に挑戦した際の体調変化、トレーニングなど経過を逐一学者の目で観察している貴重な書籍です。トレーニングの強度など考える際に大いに役立ちました。

山歩きを楽しむゆるトレッキング(高岡英夫)

なんともポップな表紙の本ですが、山の歩き方という点では一番役に立った書籍です。「重い荷物を持って坂を登る」という登山・トレッキングにとって根源的な運動をする際に、「いかに楽に、太ももの筋力を使わずに歩くか」というこの本で提唱されているメソッドは非常に参考になりました。今でも山歩きの際には常に意識して実践しています。欲を言えば下り坂の歩き方についても記述があれば良かったのですが。

トレッキングの体力とは直接関係ありませんがこういったものでモチベーションが上がりました。
世界の名峰 グレートサミッツ エベレスト 世界最高峰を撮る

トレッキング中に出会った数少ない日本人はみなこれに影響されてヒマラヤトレッキングに来たと言っていました。私自身もこの映像に出てくるエベレストの姿が目に焼き付くぐらいまで繰り返し観ていたので、実際のエベレストを目にしたときは感激もひとしおでした。また、映像の中に登場するシェルパのリーダー格の方と実際にあえて親しく話が出来たのも良い思い出です。映像で見てあなたのことをよく知っていると言うと大変喜んでくれました。

ヒマラヤを歩いてみて

結果的にはトレッキングの全期間を通じて丹沢の大倉尾根より厳しいと思えるコースはありませんでした。アンナプルナ内院コースの前半部分で非常に長い登り階段がありましたが、あえぎあえぎ登りつつも大倉尾根のほうが厳しかったなと思っていました。ただし、標高1000m台の丹沢に対して、ヒマラヤは標高が3000〜5000m台で空気の薄さが敵となります。4500mを超えられるかどうかがカギになると言われたことがありますが、確かに4500m以降急に足が前に出なくなったのを覚えています。それでも何とか考えていたトレックを完遂できたのは事前のトレーニングの賜物かなと思っています。

丹沢で出会った登山者に「大倉尾根が登れれば北アルプスへは十分に行ける」と言われたことがあります。少なくとも北アルプスへ行くのに十分な体力があればヒマラヤトレッキングは可能ということになります。では北アルプスが登る体力がない場合はトレッキングができないかというとそうでもなく、ヒマラヤトレッキングではもっと行程の短いコースがいくつもあります(アンナプルナ方面ではプーンヒルまでのトレッキング、エベレスト方面ではナムチェまでのトレッキングなど)。これならわずか数日の日程ですので実現の可能性は高いのではないでしょうか。プーンヒルはダウラギリやアンナプルナの好展望地で、ナムチェからも小高い丘に登ればエベレストを見ることができます。

大まかに言って北アルプスへ行くのに十分な体力があればヒマラヤトレッキングは可能。あとは長期間の歩行に耐えられるかどうかと高所(標高)への対応次第という事になるかと思います。




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