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海外トレッキングに必要な体力について

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私がトレッキングに出発するにあたって最も気になったのが、自分の体力で歩き通せるものなのかどうかがわからないという事でした。実際にトレッキングを経験した今となっては、あの程度の体力で通用するのだということがわかりますが、当時の自分としては一番欲しかった情報でした。個人によってどの程度の体力が必要かというのは違ってきますが、登山初心者である私自身の経験をお伝えすることで何らかの参考になればと思います。

それまでの登山経験

私は関東在住ですが、全くと行っていいほど山には親しんできませんでした。トレッキングを意識しだしてから近場の丹沢山地に通うようになり、夏場には高さを求めて富士山にも登りました。が、日本アルプスなどの本格的な山には一度も登ったことがありません。

日常的なトレーニング

出発半年ほど前から丹沢山地に月2回のペースで通うようにしました。大倉尾根(通称バカ尾根)という標高差1200mを一気に登る尾根があり、ここを練習台として繰り返し登りました。標準コースタイムが3時間半ですが、私の場合出発直前でやっと3時間を少し切る程度で、スピーディに登り切るという事は今も出来ていません。大倉から塔ノ岳を通過して丹沢山までの片道10kmを往復する(帰路は鍋割山を経由することも)というのがトレーニングコースでした。このコースをトレイルランニングしている人も大勢いて、この人達ならヒマラヤでトレッキングだけでなく登山ができるのではないかと、なかば呆れながら眺めていました。

日常的にはジョギングを週に数回のペースで行いましたが、登山は登山そのものでしか鍛えられないというのが実感です。低山でもいいので頻繁に登ったほうが効果があるように思えます。

出発直前には高度順化を狙って富士山に2回登りました。1回はできるだけ高地に身を置くために宿泊し、もう1回は長時間歩行の訓練として日帰りの日程にしてみました。須走口から富士山頂上まで6時間前後かかっているので全く平均的な登山力ということになります。

体質的な問題

別のページにも書きましたが私は呼吸器に持病があります。高地トレッキングにあたりその点が不安で国際山岳医に相談しました。先生曰く「標高があがったからと言ってそれが即座に呼吸器に影響を及ぼすものではない」という事でした。100%保証できるものではないが、平地にいるのと同じ健康状態を保っていられるのであれば、持病があっても高地トレッキングを行うことは可能とのアドバイスをいただきました。日頃から身体を動かすことと体調に留意することも日常的なトレーニングの一環として意識していました。

参考にした書籍など(一部)

登山の運動生理学百科(山本正嘉)

これほど具体的、科学的に登山を考察した本もなかなかないと思います。著者自身が8000m峰に挑戦した際の体調変化、トレーニングなど経過を逐一学者の目で観察している貴重な書籍です。トレーニングの強度など考える際に大いに役立ちました。

山歩きを楽しむゆるトレッキング(高岡英夫)

なんともポップな表紙の本ですが、山の歩き方という点では一番役に立った書籍です。「重い荷物を持って坂を登る」という登山・トレッキングにとって根源的な運動をする際に、「いかに楽に、太ももの筋力を使わずに歩くか」というこの本で提唱されているメソッドは非常に参考になりました。今でも山歩きの際には常に意識して実践しています。欲を言えば下り坂の歩き方についても記述があれば良かったのですが。

トレッキングの体力とは直接関係ありませんがこういったものでモチベーションが上がりました。
世界の名峰 グレートサミッツ エベレスト 世界最高峰を撮る

トレッキング中に出会った数少ない日本人はみなこれに影響されてヒマラヤトレッキングに来たと言っていました。私自身もこの映像に出てくるエベレストの姿が目に焼き付くぐらいまで繰り返し観ていたので、実際のエベレストを目にしたときは感激もひとしおでした。また、映像の中に登場するシェルパのリーダー格の方と実際にあえて親しく話が出来たのも良い思い出です。映像で見てあなたのことをよく知っていると言うと大変喜んでくれました。

ヒマラヤを歩いてみて

結果的にはトレッキングの全期間を通じて丹沢の大倉尾根より厳しいと思えるコースはありませんでした。アンナプルナ内院コースの前半部分で非常に長い登り階段がありましたが、あえぎあえぎ登りつつも大倉尾根のほうが厳しかったなと思っていました。ただし、標高1000m台の丹沢に対して、ヒマラヤは標高が3000〜5000m台で空気の薄さが敵となります。4500mを超えられるかどうかがカギになると言われたことがありますが、確かに4500m以降急に足が前に出なくなったのを覚えています。それでも何とか考えていたトレックを完遂できたのは事前のトレーニングの賜物かなと思っています。

丹沢で出会った登山者に「大倉尾根が登れれば北アルプスへは十分に行ける」と言われたことがあります。少なくとも北アルプスへ行くのに十分な体力があればヒマラヤトレッキングは可能ということになります。では北アルプスが登る体力がない場合はトレッキングができないかというとそうでもなく、ヒマラヤトレッキングではもっと行程の短いコースがいくつもあります(アンナプルナ方面ではプーンヒルまでのトレッキング、エベレスト方面ではナムチェまでのトレッキングなど)。これならわずか数日の日程ですので実現の可能性は高いのではないでしょうか。プーンヒルはダウラギリやアンナプルナの好展望地で、ナムチェからも小高い丘に登ればエベレストを見ることができます。

大まかに言って北アルプスへ行くのに十分な体力があればヒマラヤトレッキングは可能。あとは長期間の歩行に耐えられるかどうかと高所(標高)への対応次第という事になるかと思います。




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海外トレッキングに必要な手続き

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ここではヒマラヤトレッキングに必要な手続きをまとめます。

ネパールビザ

ネパール入国の際に当然必要になります。日本国内でネパール大使館に発行してもらうか、カトマンズのトリブヴァン国際空港に到着した際に空港で発行(アライバルビザ)してもらいます。私はアライバルビザ(3ヶ月100ドル)を取得しました。トリブヴァン国際空港は非常に小さい空港なので手続きの場所がわからずまごつくことはないと思います。

TIMS

ネパールでのトレッキングにはTIMS(Trekkers’ Information Management System)という許可証の発行が必要となります。トレッキングエリアへの入域の際にチェックがあるので無許可で歩くことはできません。私はアンナプルナ地域とクーンブ(エベレスト、ゴーキョ方面)地域を歩いたので、それぞれの地域用の許可証が必要でした。

入山している外国人を登録するのが目的のようで、2014年秋に発生したアンナプルナでの大事故(私もその日すぐ近くにいました)の際には何人の外国人が巻き込まれたかを確認するのに活用されたと聞きました。

旅行会社経由でトレッキングを行う場合、許可証に関しても旅行会社が行ってくれるはずです。自力で歩く場合はこの手続きも自分で行う必要があります。私が手続きを行ったカトマンズを例に説明します。

カトマンズのネパール観光局(Nepal Tourism Board)へ向かいます。
観光客の多いタメル地区から徒歩30分もかからなかったと思います。申請書に必要事項(個人情報、トレッキング期間など)を記入します。トレッキング期間は実際のものより開始日を早めに、終了日を遅めにして申請したほうが良いでしょう。ネパール国内での緊急連絡先を記入する欄がありましたので、トレッキング後に戻ってくる予定のホテルの番号などを用意しておいたほうがいいと思います。顔写真が2枚必要で、私はポカラで安く大量に写真を撮っておきました。

TIMS登録と入山許可であわせて3000円ほど支払ったと思います(正確な金額とドルで支払えたかどうかは覚えていません)。

ふたつ折りになっているTIMSカードとその内側に貼り付けられた入山許可証(Entry Permit)が、あまり待ち時間もなくその場で発行されます。トレッキングエリアに入る際と出る際にチェックポストで点検されます。

ポカラにある出入国管理事務所(イミグレーションオフィス)でクーンブ方面の許可証発行をお願いしたのですが、ここではアンナプルナの許可証しか発行できないとのことでした。両方対応できるのはおそらくカトマンズのイミグレーションオフィスだけでしょう。

<追記>
ネパール観光局まで行かなくてもタメルでTIMS手続きができたようです。全く知りませんでした。
http://blog.livedoor.jp/mountfuji_nepal/archives/41323444.html

海外旅行保険

トレッキングのための手続きとは少し異なりますが、海外旅行保険へ加入しておいたほうがよいでしょう。期間が3ヶ月以内であればクレジットカード付帯の海外旅行保険でも代用できます。いずれの場合も補償内容(適用範囲・金額など)と保険適用条件(自動付帯か利用付帯か等)をよく確認する必要があります。

補償内容のうち最低でも救援者費用の金額がヘリコプター搬送にかかる費用より大きいものを選ぶ必要があります。また、保険約款で「トレッキング中の疾病・事故は対象外」となっていないか要確認です。通常はアイゼン・ピッケルなどの専用の登攀道具を使わない行動であれば補償の範囲内としているところが多いとは思いますが、カード会社あるいは保険会社に事前に確認しておくとより安心でしょう。




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高山病対策

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ヒマラヤなどの高地でトレッキングを行う場合、高山病というのが最大の懸案のひとつだと思います。日本で体験できる最も高い標高が富士山の3776mですが、特にエベレスト街道でのトレックではその大半がこれより高い標高です。実際ほぼ毎日トレックングエリアの奥深くまでヘリコプターが飛来してトレッカーの救助、カトマンズへの搬送を行っていました。その中にはもちろん負傷者も含まれていたと思いますが、かなりの割合で高山病の症状悪化による搬送者がいたと思います。

標高が上がるほど気温が下がるのは我々は体験的に知っていますが、それと同時に気圧も下がります。気圧が下がると空気が薄くなります。富士山の標高で平地の3分の2、標高5000mでは平地の半分になります。平地からいきなりこの高地にヘリコプターで運ばれてある程度の時間滞在すると酸欠で高山病の症状が出るのではないかと思います。実際にネパール:カトマンズからヒマラヤ山中のナムチェバザールへヘリで飛来してしばらく滞在する観光プランがあるようですが、おそらく短時間しか滞在させないのでしょう。

高山病を防ぐには徐々に標高を上げる(=歩いて登る)ことで身体を少しずつ薄い空気に慣れさせていく他ありません。人間の体は実にうまく作られていて、生まれてから経験したことのない標高であっても時間をかければある程度順応してくれるのです。8000m峰に登頂しようという人達は次元の違う高度順応が必要になると思いますが、トレッキングレベルであれば十分な注意を払うことである程度リスクを下げることができると思います。

事前準備

出発前に日本国内でできる準備です。日頃からよく運動する(これで酸素摂取量を大きくしておく)、定期的に山に登る等に加えて下記のようなものが考えられます。

富士山を利用する

出発直前の9月に2週続けて富士山へ登りました。それほど本格的な技術を必要とせずこの標高を経験できる場所として富士山は貴重な存在です。1回は1泊しできるだけ長時間高所に身体をさらすようにしました。もう1回は長時間の歩行に対応できるように日帰り登山を行いました。いずれも比較的登山者の少ない須走口から登っています。

歩くトレーニングとしては良い方法だと思いますが、高山病対策としては初秋にヒマラヤトレッキングを行う場合しか通用しません。高度順応の効果はそれほど長続きしません(持続期間は1週間という人もいれば2ヶ月という人もいて様々です)。

個人的にはこれは役に立ったと思います。残念ながら富士山の近場の方しかこの方法は使えませんが。

低酸素室の利用

高地トレーニング用の低酸素室というものがあります。人工的に作りだした高所環境で身体を慣らすというものです。本格的に高所登山を行う人たちはここで寝泊まりしたりするそうです。実際の環境を経験してみる、あるいは低酸素に極端に弱い体質ではないか確認するという意味では試してみても良いかと思います。

私はトレッキング前には利用しなかったのですが、体験したことのない高所へ旅行した際に利用したことがあります。

好日山荘 低酸素トレーニング

実際に室内で運動を始めると脈拍が上がりめまいもしてきました。富士山のように徐々に標高を上げていったわけではないので、身体への影響が如実に感じられます。結果的にはこのおかげで高地での順応とその後の活動に非常に役立ったと思います。

他にも低酸素トレーニングを実施している団体は多いと思いますので関心のある方には一考の価値があるかと思います。

山岳医への相談

私は呼吸器に持病があるため事前に医師に相談してみました。国際山岳医に認定された方が日本にも何人かおられますが、その内のお一人がたまたま近くで開業しておられたためそちらへ伺いました。色々なアドバイスもいただけるかと思いますので、もしお近くにそういう方がおられる環境にあれば試してみるのも良いと思います。

高地への旅行

私の場合、たまたまトレッキングの前月に高地への旅行予定がありました。ここでは初日に風邪をこじらせ高山病とあわせて大変な思いをしたのですが、それでも何とか回復し最高高度で4500m前後という未体験の標高を経験することが出来ました。これは肉体面、精神面の両方に非常に役に立ったと思います。

トレッキング中の対策

標高を上げすぎない

1日の標高差を500m以内に抑えるというのが高山病を防ぐ上では重要だそうです。トレッキング会社のプランでも1日に1000m近く高度を上げる日があったりして実際にはなかなか難しいかと思いますが、少なくとも頭には入れておいたほうが良いと思います。

高度順応日を入れる

エベレスト街道でのトレッキングではナムチェバザール(3440m)で1日を高所順応日にあてています。多くのトレッキング会社のプランでも同様です。その後の行程の中で、明日標高を上げるのは難しいなと感じたら適宜休息日を入れるようには意識していました。

水分を大量に取る

水分を大量に摂ることで新陳代謝を促し、高地順応を促進するという意味合いがあるようです。概ね標高と同じ量(4000mなら4000cc)というのが目安のようですがおそらくそこまでは飲めないと思います。食事などに含まれる水分も合わせてなので実際にはもう少し少量でも良いと思います。とにかくできる限り大量に水分を摂るのが鉄則です。エベレストへ登るようなシェルパ達はひと晩で数リットルの水を飲んでしまうそうです。

地元ガイドいわくジンジャー(ショウガ)が高山病に効くという事で、食事時の飲み物はもっぱらジンジャーティーにしていました。

食事をしっかり摂る

体調が悪いとどうしても食欲がなくなります。それほどではない運動量でも高地では極度の疲労を招くことがあり、私も何度か食事を抜いて飲み物だけにせざるを得なかったことがあります。隣室のトレッカーが高山病で夜通し苦しんでいて、日中も水以外一切受け付けない状態のことがありました。本人がどうしても下山したくないと言うので、それならせめてスープだけでも飲むようガイドやロッジスタッフが代わる代わる促していました。食事を摂ることが、新陳代謝促進、身体を温める、カロリー補給(寒いとそれだけでカロリーを消費します)につながり、高山病を含む体調悪化を防止できます。

寒さに注意する

寒さは高山病にかかるリスクを高めます。地元ガイドは特に頭を冷やさないようにと口うるさく言います。身体を冷やすのももちろん良くないので、2500mを超えたら暑いと感じてもアンダーウェアの上に来ているレインジャケットを脱ぐな、ジッパーも下げるなとも言われました。就寝時もできるだけ暖かくして寝ることが欠かせません。

深呼吸する

単純なことで深呼吸によって酸素をより多く肺に送り込むだけです。低酸素室でトレーニングする際にパルスオキシメーターという機器で血中酸素飽和度(SpO2)を測定します。平地では99〜100%ぐらいの数字が出ますが、高地(低酸素室)では80%といった平地なら即入院レベルの数値が出ます。深呼吸することでそれがかなり改善されるので効果はあると思います。

予防薬の服薬

別ページの常備薬のところでも触れたダイアモックス(アセタゾラミド)を予防的に事前に計画的に服用するという方法があります。個人的にはあまり薬に頼ることをしたくなかったので、どちらかというとお守りのようなつもりで持っていました。服用スケジュールなどは専門の医師やガイドに確認してみてください。

同じく標高の高いチベットでは「紅景天」「高原安」という漢方薬が高山病に効くとして有名です。試していた人を見た限りでは劇的に効いたというわけではなかったようです。これもダイアモックス同様、効き目は人によって異なるでしょう。

富士山では簡易酸素吸入スプレーを使っている人をよく見かけました。ヒマラヤでは見たことがありませんでしたが、緊急事態でない限り安易に酸素吸入して順応しようとしている身体の邪魔をしたくないと個人的には思います。ロッジによっては酸素吸入器が置いてあるところがあります(ゴーキョの宿:ゴーキョリゾートにはあったと思います)。

現地医師に診察を受ける

カラパタール方面にあるペリチェには診療所があるので、体調によってはそちらで診察を受けるのもひとつの方法でしょう。

高い標高に着いてすぐに眠らない

これは低地からいきなり高所に到着した場合についてです。高度を上げると妙に眠くなることがあります。これは酸素不足が引き起こす症状で、このまま眠ってしまうと本格的に高山病の発症を招いてしまいます。睡眠時にはどうしても呼吸が浅くなりますので、高地に着いたら散歩するなりして身体を少しでも環境に慣らすことが重要です。

発症してしまったら

基本的には少しでも標高を下げるしかありません。ひどい症状で生きるか死ぬかというような状態だった人が、背負われて標高を下げただけで嘘のように元気になったという話を聞いたことがあります。

私が自分のトレッキング中に考えていたのは

1.体調が悪くなったらその標高で滞在して回復するか様子を見てみる
2.改善しない場合は少し標高を下げてみる
3.どうしても回復できず自力下山も難しい場合、現地の人で背負って下ろしてくれる人がいないか頼んでみる
4.最後の手段としてヘリコプター搬送

1.の状態で何日も同じ標高で粘っているトレッカーがいました。この場合はいったん標高を下げて再挑戦したほうが成功の可能性が高いように思います。

4.は最終手段ですが毎日少なからぬ数のトレッカーが搬送されていました。ヘリでの搬送自体も危険を伴うものなので何とか避けたい事態です。搬送費用は60〜300万円と随分幅があるようです。ヘリ搬送を含む海外旅行保険もしくは山岳保険に入っていなければ、実費負担になってしまいます。

意外なことにシェルパ族でもしばらく平地に滞在してから高地に戻ってくると高山病になることがあるそうです。もともと人間は高地で住むような身体にはできていないという事でしょうか。高地で生まれ育った彼らですらそうなのですから、平地に住むわれわれ日本人が高山病になるのは当たり前だと思えてしまいます。かからなければラッキーだったぐらいに思っておいて、自分の体調を冷静に観察しつつうまく付き合っていくしかないのでしょう。




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海外トレッキングに必要な装備

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装備に関しては、日常的に登山をされている方は現在お持ちの装備に寝袋を加える程度で事足りるでしょう。私は本格的な登山経験がなく、当初は何が必要なのかの知識もありませんでした。以下、私が現地に持参した装備を記します。10〜11月のトレッキングについてはこれでほぼ問題ありませんでした。

◆帽子
ガイドに「頭を冷やすと高山病にかかりやすい」と口を酸っぱくして言われ続け、常にかぶっていました。
シャワーをなかなか浴びられないので、頭を隠す役目も果たしてくれました。
ポカラで数百円で購入した、耳あてとあご紐つきの帽子で、特に登山に特化したものではありません。
これをかぶって日焼けすると完全にネパール人に化けることができます。

◆サングラス
周囲が雪に覆われて快晴の場合、雪の反射で目がやられる恐れがある(一時的に完全に目が見えなくなることもあるそうです)ので必携。
日本で3000円程度で購入したUVカットできるサングラスが役に立ちました。

◆マフラー、ネックウォーマーの類
一応手編みのマフラーを持っていったものの、結局最後まで使う機会がありませんでした。

◆半袖Tシャツ
日中は陽が出て気温も上がるので、標高2000mぐらいまではTシャツ1枚でも汗だくになります。
ポカラで400円で購入したNorthFaceのTシャツ(もちろん偽物)を着用

◆アンダーウェア
モンベル スーパーメリノウールM.W(ミドルウェイト)上下

概ね標高2000〜3000mあたりではこの長袖のアンダーウェア1枚でOKでした。やはり猛烈に汗をかくので、素早く汗を外に出して蒸発させてくれるこのシャツが非常に役に立ちました。着ているだけで吸湿発熱してくれるので少々の寒さも平気です(防風性ゼロなので風があるときは上に何か着る必要があります)。肌に密着している必要があるので普段の自分が着るものよりワンサイズ小さいものを着用しました。

◆ジップアップシャツ

アンダーウェアだけで寒いような場合に重ね着するつもりで、ポカラで900円程度で購入したものを持参しました。実際にはあまり出番がありませんでした。

◆レインウェア兼ウインドブレーカー
上:モンベル ストームクルーザー
下:モンベル レインダンサー

結局雨中を歩く機会はほとんどなかったものの、標高が上がってからは行動中の防寒着としてストームクルーザーの方は毎日必ず着用しました。5000m以上の標高を歩く場合でもよほど気温が低くない限り日中はアンダーウェアとレインウェアの2枚だけでしのいでいます。

◆トレッキングパンツ
モンベル ノマドパンツ

かなりの寒さを予想して厚めのパンツを用意したのですが十分な耐寒性で行動中に寒いと感じることはありませんでした。

◆トレッキングシューズ
モンベル ツオロミーワイドブーツ

モンベルが出している入門者向けのトレッキングシューズ。私は足が横に広いのでワイド版を勧められました。

トレッキングの際に、登山靴やトレッキングシューズを履いていくのか、スニーカーやスポーツシューズで歩くのは人により意見が分かれるところでしょう。実際ネパール人ガイドやシェルパたちは全員ふだん履きのままで、どんな急坂も岩場もすごいスピードで歩きます。ただし、ガイドたちはふだんこそこちらに合わせてゆっくり歩いてくれますが、いざという時のスピードは尋常ではありません。シェルパ族のガイドはそれ以上です。私自身は彼らと自分の違いをはっきり認識させられたので軽装備にしなくて正解だったなと思っています。もちろん、十分な体力や経験がありふだん履きの靴でも歩き通せる日本人トレッカーも多いでしょうからそこはその人次第です。

◆靴下
ノースフェイス、モンベル 中厚手のトレッキングソックス

足と靴と靴下の組み合わせを出発前に一度試しておいたほうが良いです。靴を履いてピッタリのサイズでも厚い靴下を履くと歩きづらくなることがあります。

◆手袋
市販のウールの手袋、ポカラで200円で購入したインナーグローブ、モンベル ULシェルグローブ

これは失敗しました。登山中は平気でしたが、ゴーキョピークとカラパタールに登ってしばらく滞在した際に、身体は重ね着で防寒できるものの手の冷たさだけで下山しようかと考えてしまうほどでした。雪山用あるいはウィンタースポーツ用の手袋を用意するべきでした。

◆バックパック
ドイター エアコンタクト65+10

旅の荷物をすべて入れるための大型ザック。荷物を自分で持って歩くことを考えてこのサイズにしたのですが、今回のトレッキングに関しては明らかに大きすぎました。登山に不要な荷物はカトマンズなどのホテルで預かってもらえる(下山後にまた泊まる条件で)ので、40リットルか、寝袋などのサイズによってはそれよりも小さいザックで十分事足りるでしょう。大半の荷物をポーターに持ってもらうのであれば自分用のものは最小限のサイズで良いと思います。

総重量については本来であれば7kg程度に抑えるのが正しいと言われますが、私の場合常時持ち運ぶ水も含めて12kg程度になってしまいました。このザックを選んだ最大の理由はウエストベルト(ヒップベルト)が他のどのメーカーのものより頑丈でしっかりしていたことです。ウエストベルトを腰骨の位置でしっかり留めて、重さを腰7:肩3ぐらいの配分になるようにすると意外なほど重さを感じず楽に歩くことができました。ヨーロッパのトレッカーにこのメーカーのザックを使っている人を多く見かけました。彼らも一様に「ザックは腰で持つものだ」「ウエストベルトが最も重要だ」と言っていました。

ザック自体の重さが3kg近くあり購入をためらいましたが、軽量化されている製品はウエストベルトやショルダーベルトなの重さを支える部分が軽量化で弱くなっていることが多く、重さをそれほど気にする必要はないと登山用品店の店員さんには説明を受けました。店員さんいわく、荷物を入れずにザックをウエストベルトだけを持って持ち上げてみて、ザック自体がきちんと直立するかがベルトの強度を見る目安になるそうです。確かに軽量化ザックは自重に耐え切れず倒れてしまうものばかりでした。

その他に、このザックは背中にかく汗の量が少なくなるように背中のパッド部分に特殊な加工がされており、これも汗かきの私にはありがたいものでした。雨に備えてザックカバーも必携です(このザックには標準装備されている)。

ちなみにガイド、ポーターを雇えば荷物を持ってもらい自分は手ぶらに近い状態で登ることができますが、その場合でもポーターに持ってもらえる重さは12kg程度までとの事です。旅行会社経由でポーターを手配してもらう際はそのへんは比較的きっちり決められていると思います。現地で直接雇う場合は交渉次第でしょうか。バックパックでなくボストンバッグのような形態であっても、彼らは持ち手を額にかけて首で荷物を支えて登ります。

◆ロッジでの服装
アンダーウェア:ユニクロヒートテック タートルネックTシャツとインナーパンツ
シャツ:メーカー不明 フリース地のタートルネックシャツ
フリース:モンベル クリマエアライニングジャケット
ダウンジャケット:ナンガ ナノダウンジャケット
ダウンパンツ:ナンガ スーパーライトダウンパンツ

宿にいる間のアンダーウェアは汗の排出機能など考えなくていいので、ユニクロのヒートテックで間に合わせました。あとは手持ちの服をすべて重ね着していくような感じです。個人的にはダウンパンツが非常に役に立ちました(持ってきている人はほとんどいませんでした)。

ロッジでは暖房設備があるのは基本的に食堂だけで宿泊する部屋には暖房はないため、十分な防寒対策が必要です。朝晩は外気温がマイナス10度から15度ぐらいには下がるので、屋内のトイレであっても水は全て凍っていることが多いです。寒さが高山病のきっかけになるケースが多いそうで、風邪を引くと致命的なので要注意です(一度高地で風邪を引いて大変な目にあったことがあります)。

◆寝袋
ナンガ オーロラ600DX

もともと掛け布団が用意されていないロッジも多く寝袋は必携です。正直なところこの寝袋はオーバースペックですが(手元にこれしかなかったので)、そのおかげで就寝中に寒い思いをしたことはなく、他の人が寒さに震える中でも夜は快適に過ごせました。

◆常備薬など

ダイアモックス(アセタゾラミド)
本来は緑内障治療薬で、呼吸中枢に活動を促す作用があるそうで高山病治療(予防)薬として有名。日本ではこの薬がそのような目的でも使われているという事が医師の間でもあまり知られておらず、通常の医院では処方してもらえないと思います。海外旅行や海外トレッキングに精通した医師の指示を仰ぐか、海外で安く購入するかという事になります。

私は過去にインド:ラダック地方で購入したものを持参しましたが、自分の身体がせっかく自力で高所順応しようとしているのを妨げたくなかったので結局使用しませんでした。頻尿、唇のしびれなどの副作用があるそうです。同じく標高の高いチベットでは「紅景天」「高原安」という漢方薬が治療薬として珍重されています。

いずれの薬も高山病に効く「だろう」と言われているだけで効果のほどは定かではありません。服用するのであれば実際に標高を上げ始める数日前から飲み始めることが必要だそうなので、詳しい医師に服薬スケジュールを相談するなどしたほうが良いかもしれません。

日焼け止め
ヒマラヤの日差しは強烈です。地元のガイドたちも毎日顔が真っ白になるまで日焼け止めを塗りたくっていました。

リップクリームなど
極端な乾燥地帯なので、放っておくとすぐに唇がボロボロに切れてしまいます。唇にバターを塗るというチベット式のやり方も。

◆衛生用品

水のいらないシャンプー
特に標高が上がると風邪を引く恐れがあるためなかなかシャワーが浴びられないので代用品として持参しましたが、シャワーの代わりとまではいきません。少しさっぱりした「気分」になる程度です。

ウェットティッシュ
同様に入浴ができない期間の入浴代わりとして持参。朝起きて顔を洗おうにもすべての水が凍っているので、そのようなときにも非常に役に立ちました。これはあったほうが良いです。

速乾タオル
ポカラで300ルピー程度で購入したもの。湿度が極めて低く濡れたものもすぐ乾くので通常のタオルでもよかったようにも思います。

トイレットペーパー
ヒマラヤに限らず、ネパール国内でトイレットペーパーが備え付けてあるところを見たことが無いので必携。

◆電化製品

デジタルカメラ
カメラそのものよりもバッテリーに注意。気温が低いとバッテリーの消耗が早くなるという話があり、予備バッテリーをポカラで購入。実際に電源持続時間が明らかに短くなったようで、頻繁に電池交換とロッジでの充電(有料)が必要になりました。

携帯電話
ヒマラヤ山中でも何ヶ所か電波の通じるところがあり(電波塔のあるゴラクシェプやターメなど)、そこでは平地と同じように電話もネットも使えます。持参したSIMフリーのNexus5に現地で購入したNcellのSIMカードを挿して使用しましたが、ネパール国内外への連絡に非常に役立ちました。WiFiが使える宿も多く(有料のことが多い)、全く外部と連絡がつかない状態に陥ることは少ないです。唯一アンナプルナでは3000mを超えたあたりからガイドも含め下界との連絡ができなくなりましたが、これは山に取り囲まれるという特殊な地理的要因かと思います。

ヘッドランプ
高山病予防に水を大量に飲むので夜も頻繁にトイレに行くことになりますが、真っ暗なのでライトは必携です。それも懐中電灯タイプではなくヘッドランプの方が適しています。また、カラパタールやゴーキョピークで夕陽を見た後の下山時も真っ暗になるので必ずライトが必要になります。

◆あったほうが良かったもの

・ 前述の通り、冬用のしっかりした手袋
・ 軽アイゼン(アンナプルナで季節外れの大雪になり、急斜面が凍結して非常に怖い思いをしましたので)




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宿泊環境

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ネパールでのトレッキングでは通常ルート上に点々とある山小屋・ロッジに泊まることになります。私は当初、夏の富士山の山小屋のようなものを想像していました。しかし実際に行ってみると山小屋と言うよりは、ゲストハウスがたまたま山の中にあると言った方が良いような宿泊環境でした。

部屋
大部屋ではなく、個室に分かれておりプライバシーが保たれます。簡素なベッドが2つの個室が一般的です。1人であっても2人個室に泊まることはできますが、混雑状況によっては断られることもあります(個人トレッカーはこういう時に敬遠されます)。ガイドたちは別に設けられた専用の部屋で寝起きします。

掛け布団が用意されていることもありますが、薄い布団1枚では寒くて眠れないことが多いので寝袋を持参したほうが良いです。ちなみにネパール人ガイドは薄い布団だけでも平気で、感心してしまいます。

満員で全く部屋がない場合は頼み込んで食堂などで寝かせてもらうことになります(ハイシーズンにはよくあります)。食堂で雑魚寝の場合、全員の食事が終わり各自部屋に引き上げないと消灯できないので、十分な睡眠が取れない可能性もあります。ガイド付きであれば同じネパール人同士、何か他の手段がないか交渉してもらいましょう。

入浴
大抵のロッジには共同利用のシャワーが備え付けられています。ほとんどが有料です。太陽光で温水を提供しているので、晴れた日中ぐらいしか利用できません。4000m以上の標高でシャワーを浴びると高山病になりやすい(風邪をひくから、ということかと思います)と言われたため、その忠告を生真面目に守っていましたが、多くの欧米トレッカー(とくに女性)は5000m前後でもほぼ毎日シャワーを浴びていたようです。彼らは体質的に高山病になりにくいのか、また高山病になってもその体力で無理やり登ってしまうので、日本人はあまり真似しないほうが良さそうです。シャワー用のサンダルを持参したほうが良いです。

洗濯
ロッジについてシャワーを浴びるときについでに服を洗濯して干している人が多いです。乾燥しているので翌朝までにはかなり乾いています。

食事
食堂で好きなものを注文します。ネパールの国民食ダルバートなど現地の料理や、西洋料理がメインです。専門の料理人が作っているわけではないので、味はそれほど期待しないほうが良いです。トレッキング終了後、カトマンズでダルバートを食べた時にあまりの美味さに言葉を失いました。ダルバートは基本的にお代わり自由です。通常、夜のうちに翌朝食べたいメニューを宿のスタッフ(もしくはガイド)に伝えておきます。

ヒンズー教では牛が聖なる生き物なのでメニューにビーフはほとんど入っていません。代わりにヒマラヤに生息するヤク(ウシ科で全身を黒く長い毛で覆われている)が食卓にのぼることがあります。味は良いのですが、強烈に硬い肉で噛み切れませんでした。チーズを使った料理もおそらくヤクのチーズを使っていると思われますが、これは味と匂いが合わず食べられませんでした。

アンナプルナ内院のチョムロンより先(正確にはシヌワより先)のエリアは聖域(サンクチュアリー)のため肉の持ち込みが一切できません。このエリアでは全員菜食となります。またシヌワより先ではペットボトルでの飲み物の販売が一切行われないので、それまでに使っていたペットボトルを取っておくか、水筒を用意しておく必要があります。

宿泊料
大半の宿が1泊100〜300ルピーの範囲に収まっています。これは物価の安いネパールであっても破格の価格です。その理由は「3食を宿の食堂でとってもらうから」です。食事を他の所でとるような場合、宿泊料3000ルピー程度を提示されるか、宿泊自体を断られることになります。

トイレ
水洗トイレであったり、トイレットペーパーが備え付けてあったりということはまずありません。使用済みトイレットペーパーはトイレ内のくずかごに入れます。平野部ではホテルなどを中心に水洗トイレのところもありますが、その場合もトイレットペーパーを流してはいけません。簡単に下水道がつまります。

真っ暗な戸外にトイレがあることも多いのでヘッドランプは必携です。

トイレはぼっとん式もしくは大きな容器に溜めてある水を汲んで流すタイプです。後者の場合、標高が高い所では夜半から朝にかけてあらゆる水が凍るので要注意です。目の前に大量の枯れ葉が積んであって終わった後この枯葉を下に落とすようなトイレもありました。

電気
ほとんどのロッジが太陽光発電装置を備え付けていますので、日が暮れてもすべて真っ暗になるわけではありません。デジカメや携帯電話の充電も可能(ほとんどが有料です)で、ロッジによってはWiFi利用可能(これもほぼ有料)です。

売店
すべてのロッジでミネラルウォーター、駄菓子、トイレットペーパーなどを購入することができます。標高が上がるごとにどんどん値段も上がります。スニッカーズとプリングルスはどの山小屋にも置いてありました。

精算
出発の朝、食事・宿泊・充電などすべての費用をまとめて支払います。大半のロッジがUSドルでも受け取ってくれます。ナムチェバザールにはATMがありますが、他に現金を下ろせる場所は無いので、事前に必要な金額を用意しておく必要があります。




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トレッキング時期

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ネパールでのトレッキングにはハイシーズンと呼べる時期が年に2回あります。それが秋と春の2シーズンで、いずれも乾季にあたり好天に恵まれることが多いため、世界中からトレッカーが集中します。

10〜12月
最も天候が安定し山がよく見える時期です。現地の人の話では毎年12月から日本人団体客が急増するそうです。確かに11月下旬から急に日本人の姿を見かけるようになり、これ以降の時期はツアーに参加していないと宿の確保が難しいだろうなと思わされました。

秋はネパール最大のお祭りダサインが行われる時期にあたり、もしこの時期に当たれば賑やかなお祭りの雰囲気を味わえるでしょう。同時に交通機関の混雑なども覚悟しなくてはなりませんが。

1〜2月
本格的な冬になるので寒さに関してはそれなりの覚悟が必要となるでしょう。また降雪の恐れがあり、状況によっては危険を伴うと思われます。一方で、寒さ故に空気が一層澄み切って山の眺望は秋にも増して素晴らしいでしょう。秋ほどの混雑にならないのも利点かと思います。

3〜5月
秋に次いで人気のあるシーズン。エベレストベースキャンプに登山隊のキャンプ村を見ることができるのもこの時期(これ以外のシーズンはベースキャンプは無人です)。日本からのトレッキングツアーも多く催行されます。秋冬と比べると、春霞で山の遠望は効きにくいかもしれません。

6〜9月
ネパールの雨季にあたるため、一般的にはトレッキングに適しない時期。ただし、この時期は高山植物が咲き乱れる緑豊かな季節であり、ふだんと違ったヒマラヤの姿を目にするチャンスでもあります。

実際にトレッキングに出かけるとなると、やはり山を間近に見たいということで秋を選んでしまうと思います。同じ秋でも前半のほうが混雑がそれほど厳しくないので何かと好都合です。




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トレッキングエリア

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ネパールでトレッキングを行う場合を例に、私が実際に歩いたコースを紹介します。

ネパールはインドと中国に挟まれた東西に細長い小さな国です。国の北側はすべてチベット自治区と接しており、そのすべてがヒマラヤ山脈に含まれます。横長の国土の真ん中辺りに首都カトマンズ、第2の都市ポカラがあります。

アンナプルナ山群

ネパールにはトレッキングコースが数多くありますが、その中でも非常に人気のあるトレッキングエリアが大きく分けて2つあります。そのひとつがアンナプルナ山群です。

アンナプルナ峰(8091m)、信仰の対象となる聖山マチャプチャレ(6993m)を始めとする山々が連なる地域で、アンナプルナ内院(サンクチュアリー)へ向かうプランと、アンナプルナサーキットという山域の外周をぐるっと回る大規模なものがあります。もっと短期間で手軽に歩けるコースも数多くあります。この中で私が歩いたのはアンナプルナ内院へ向かうコースです。上記に上げた2つの山が目の前に見えるところまで歩いて行きます。

1日目
ポカラから車で1時間程度でトレッキングのスタート地点:ナヤプル(Nayapul:1070m)からティケドゥンガ(Tikhedhunga:1480m)へ。

2日目
非常に長い石段を登ってBanthati(2210m)を経てゴレパニ(Ghorepani:2853m)へ。

3日目
夜明け前に起きてプーンヒル(Poon Hill:3198m)へ登りダウラギリやアンナプルナ、マチャプチャレを見る。その後、タダパニ(Tadapani:2721m)へ。

4日目
長いアップダウンの後、チョムロン(Chhomurong:1951m)へ。

5日目
デウラリ(Derali:3200m)まで。本来はその手前のドヴァン(Dovan:2600m)で宿泊予定だったが、予約したはずの部屋がないと言われやむなく先へ進む。

6日目
マチャプチャレベースキャンプ(MachapuchareBC:3700m)を経てアンナプルナベースキャンプ(AnnapurnaBC:4130m)に到達。

7日目
一気にチョムロンまで下山(所要約9時間)。途中の集落全てで宿がないと断られ続けた結果そうなったもの。

8日目
天然の温泉があるジヌーダンダ(Jinudanda:1780m)まで下る。

9日目
トルカ(Tolka)を経てポタナ(Pothana:1700m)へ。

10日目
ダンプス(Dhamps)を経てフェディ(Phedi:1220m)でトレッキング終了。車で1時間かけてポカラへ戻る。

8日目以降は旅行会社のプラン上で極端にペースがゆっくりの日程になっているので、もう1日は短縮できると思います。マチャプチャレ、アンナプルナのベースキャンプで過ごした1日は生涯忘れられないものになりました。

クーンブ地方(エベレスト街道)

カトマンズから小型飛行機で1時間のルクラ(Lukla:2840m)がトレッキングの出発点になります。もっと手前のジリあるいはバンダルという村までカトマンズからバスで向かって、その後ルクラ方面まで1週間かけて歩いていくことも可能です。

このエリアには大きく分けて2つのコースがあります。ひとつがカラパタールやエベレストベースキャンプを目的地とするもの、もうひとつがゴーキョピークを目指すものです。ゴーキョピーク、カラパタールはいずれも5500m前後の丘(6000m以下のピークはここではすべて「丘」です)で、ここからの眺望が素晴らしいので多くのトレッカーが訪れます。

私は両方のルートを一度に歩きましたが、実際にはどちらか片方を歩くことが多いと思われますので、便宜上1つの行程を2つに分けて記します。

ゴーキョピーク方面

1日目
飛行機でルクラ(Lukla:2840m)へ到着後、パクディン(Phakding:2610m)へ。余裕があればもう少し先へ進んでおいたほうが良いと思います。パクディンからだと翌日の行程はかなり長丁場になります。

2日目
クーンブ地方最大の集落ナムチェバザール(Namche Bazar:3440m)へ。

3日目
高所順応日として終日ナムチェ滞在。シャンボチェの丘(3800m)に登って身体を高所に慣らす。

4日目
クムジュン(Khumjung:3790m)まで。本来はこの先まで行く予定でしたが良い村でしたので急遽予定変更しました。体調次第では3日目の高所順応をこの村での滞在に変更してもいいかもしれません。この先がゴーキョ方面とエベレスト方面の分岐道となります。

5日目
モンラ(Mong La:3973m)まで。本来は、峠に立つこの集落ではなくその先のポルツェタンガ(Phortse Tanga:3680m)まで行くはずでしたが、あまりにも景色が素晴らしいので急遽ここに滞在することにしました。

6日目
ドーレ(Dhole:4090m)へ。このあたりから朝晩の寒さが強烈になります。

7日目
マッチェルモ(Machhermo:4410m)へ。ここも素晴らしい眺めです。

8日目
湖と山と氷河に囲まれたゴーキョ(Gokyo:4750m)へ到着。元気がある人はこの日のうちにゴーキョピークに登ってしまうでしょう。

9日目
ゴーキョピーク(Gokyo Peak:5360m)へ登る。エベレストを始めとする高峰群を一望できます。

10日目
ゴーキョの先の第4、第5の湖(約5000m)へ日帰りトレッキング(往復6時間)。ここまで足を延ばす人は非常に少数です。

11日目
下山開始。マッチェルモを経てドーレまで下りる。体力があればまだ先へ下りることも可能でしょう。

これ以降、ルクラまで下山するのであれば
12日目:ナムチェバザールまで
13日目:ルクラまで(2日に分けても良い)
という日程になるかと思います。

私の行程が寄り道をしながらのものなので、実際には1〜2日(健脚であればそれ以上に)短縮可能かと思います。

エベレスト方面

1日目
飛行機でルクラ(Lukla:2840m)へ到着後、パクディン(Phakding:2610m)へ。余裕があればもう少し先へ進んでおいたほうが良いと思います。パクディンからだと翌日の行程はかなり長丁場になります。

2日目
クーンブ地方最大の集落ナムチェバザール(Namche Bazar:3440m)へ。

3日目
高所順応日として終日ナムチェ滞在。シャンボチェの丘(3800m)に登って身体を高所に慣らす。

4日目
プンキテンガ(Phunki Tenga:3250m)を経てタンボチェ(Tenboche:3867m)へ向かうことになるかと思います。私自身はゴーキョ方面からこのコースへ移ってきたため、この日は深い谷を挟んで向かいにあるポルツェ(Phortse:3840m)に滞在しています。

5日目
パンボチェ(Panboche:3985m)へ。この先のペリチェまで行くこともできますが少々長い道のりになるため、私は2日に分けて歩いています。

6日目
ペリチェ(Periche:4252m)へ。ここは救護所があるためいざという時には助けになります。ここは朝晩の冷え込みが強烈です。

7日目
トゥクラ(Tukla)を経てロブチェ(Lobuche:4930m)へ。

8日目
宿泊地としては最高地点のゴラクシェプ(Gorakshep:5160m)へ。この日のうちにカラパタール(Kala Patar:5545m)に登り夕陽に染まるエベレストを見ましたが、体力的には少々厳しかったです。

9日目
エベレストベースキャンプ(Everest Base Camp:5350m)へ日帰りトレッキング。トレッカーが行くことを許される最も遠い場所です。

10日目
下山開始。ロブチェ、トゥクラを経てからペリチェへ向かわず分岐道を歩いてディンボチェ(Dingboche:4350m)へ。

11日目
私は体調不良でディンボチェで1日静養しましたが、そうでなければこの日のうちにチュクン(Chhukung:4743m)へ向かいます。ローツェ(Lhotse:8516m)に近く、加えてカンレヤムウ(6246m)というヒマラヤ襞が非常に美しい屏風のような山を目にすることができます。チュクン・リ(ChhukungLi:5550m)という第3のピークに登ることもできます(事前申請が必要だそうです)。

12日目
アイランドピークベースキャンプ(Island Peak BC:5070m)への日帰りトレッキング(4〜5時間)

13日目
下山開始。タンボチェ(Tenboche:3867m)まで谷沿いに激しくアップダウンを繰り返します。

14日目
通常はナムチェバザールまで、あるいは翌日のことを考えてもう少し先の集落まで進むことになるかと思います。私の場合はこの日再度クムジュン村へ滞在し、翌日からターメ(Thami:3750m)へと足を延ばしています。

15日目
ナムチェからルクラへ戻りトレッキング終了。翌日早朝の飛行機でカトマンズに戻ります。

私の行程では1日の歩行時間を短めにしているので、そこをフルに歩きチュクン方面への寄り道もなくせば3日程度は短縮できます。ただ、チュクンは省くにはあまりにも惜しい場所でしたので、時間が許せばぜひ日程に組み入れてみていただきたいところです。

コースを考えるにあたってネパール・ヒマラヤ・トレッキング案内という本が非常に詳しく、大いに助けになりました。この本の必要部分をコピーしてトレッキング中ずっと持ち歩いていました。外国人トレッカーにはロンリープラネットのTrekking in the Nepal Himalayaを持っている人が多くいました。また、カトマンズやポカラで安く山岳地図が買えるので、これもぜひとも入手しておいたほうが良いです。

実際のトレッキングの行程についてはこちらに詳しいのでご参照ください。




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海外トレッキングの方法

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海外トレッキングを手配する方法は大まかに下記のように分類されます。

1. 日本のツアー/トレッキング会社で手配する

「海外トレッキング」で検索すると、国内で海外トレッキングを手配してくれる会社がたくさんヒットします。海外への渡航、宿泊先手配、トレッキングガイドやポーターの手配、トレッキングに必要な手続き等、すべて代行してくれます。不測の事態に対する備えもしっかりしています。純粋にトレッキングを楽しむことだけに集中できます。ただし料金は最も高い部類になります。

2. 現地のツアー/トレッキング会社で手配

ネパールであればネパール国内に無数にあるトレッキング会社に手配を依頼するものです。通常は日本からの渡航、日本への帰国を除く全ての部分について手配を行います。現地の物価が反映されることもあり、日本の会社で契約するより安価です。ただし、基本的に契約手続きを含めたやり取りがすべて英語になること、日本語ガイドが手配できるとは限らないことなどがデメリットとして考えられます。

3. 現地でガイド・ポーターを個人的に雇う

旅行会社を通さず、トレッキングの開始地点に着いてから現地でガイドなりポーターなりを雇う形です。通常は宿で紹介してもらうか、道で向こうから声をかけてくるのを待って交渉することになります。料金については交渉次第でかなり安く済ませることができます。デメリットとしては、きちんとどこかの組織に所属しているわけではない人を雇う事になるため、ガイド・ポーターとしての質が保証されない点が挙げられます。

4. 完全に独力でトレッキングを行う

自分ひとりで全てを行うので、気分に応じて予定変更など自由に行うことができます。料金的にも最も安くなります。反面、リスクは最も多く、諸々の手続き、宿の手配、体調管理、セキュリティ管理などすべて自分で行わなければなりません。また、他のトレッキング客から「地元経済に貢献していない。ガイドを雇うべきだ」などと批判されることもあります。

私自身の場合

私自身は2.の現地旅行会社による手配と、4.の独力でのトレッキングの両方を経験しました。

前者は何しろ楽です。宿の交渉も同じネパール人同士なのでスムーズで、団体客でなくとも比較的良い部屋をあてがわれる可能性が高くなります(宿では個人客は冷遇されることが多いです)。

現地旅行会社については出発前にある程度目星をつけていました。

Nepal Trailblazer

ネパールの首都カトマンズにあるトレッキング会社で、トレッキングガイドブックの出版も行っており信用できるのではないかと感じました。ネパール到着後連絡を取ってすぐその場で契約に至りました。どのガイドも非常に責任感が強く誠実な仕事ぶりでした。ネパールの旅行会社としては少々高い部類に入るかもしれません。

カトマンズには日本人が経営に関与している旅行会社がいくつかありますが、その中で日本人女性が切り盛りしているのぞみトレックは非常にお勧めです。今回は航空券の手配のみお願いしましたが、現地旅行業界に精通しておられるようで頼りになります。

後者の単独トレッキングは何しろ自由です。今日の行き先はどうするのか、滞在を延長するのかなどなどすべて自分の気の向くままに出来ます。全てのことを自分でしなければならないので、苦労も多いですがそのぶん自分の印象には強く残ります。一方で道中の危険箇所などの情報が入手できないため、常に注意深く自分で自分の身を守るようにしなければなりません。

私はやはり自由な気分でいたかったため単独トレッキングを選択しましたが、どちらが上でどちらが下というものでもなく、それぞれのリスクも十分に把握しつつ各自の好みの方法を選択すればよいと思います。




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